2010年8月5日木曜日

早春賦


 「春は名のみの 風の寒さや・・・」告別式で、早春賦が流されていた。・・・故人:恩師の「思い出ノート」(写真:直筆のコピー)に書き綴られた「早春賦のこと」を以下に掲載する。

 この歌を口ずさみするたびに涙がでてきて、おしまいまで歌えません・・・雪国では土が現われはじめますとまだまだ寒くても光は強くなり、畑には堆肥もまかれ農耕の準備もはじまり、川端のどろ柳は白綿毛の芽ぶき、遠くから白い辛夷の花も見えてきます。わずかですが土も現われてきます一番うれしい時です。
 子どもらは半年ぶりに現われたわずかの地面で競うように釘さし、石けり、メンコ(北海道ではパッチ・・・)など暗くなるまで遊んだものです。早春賦を聞きますとその頃がすぐ思い出されます。風がつめたく鼻汁をそで口で拭きながら遊んだものです。学校が終えると鞄を放りなげてすぐ浦幌川や湿地に点在する沼で釣をしました。川ではうぐい、川かじか、どじょう・・・うぐいは焼いて干しだし用に、どじょうは鶏の餌に使ったものです。鮒は一番喜ばれました。味噌汁にして夕食の食卓に出た時、家族に美味しいと喜ばれたものです。
 夕方はえなわを仕掛けると赤はら(産卵期に入った大きいうぐい)もとれます。びんどうもよくしかけたものです。
 秋にはこくわ(さるなし)山ぶどう・・・など採る山はこの時期は山みつば、蕗、小川では芹などの採れはじまります。
 兵隊ごっこやチャンバラ遊びもこの里山ではじまります。
 ポケットにはみな愛用の肥後守ナイフをもって柳の枝の皮むきをして刀づくり。
 早春賦を歌いますとすぐ情景が現われます。
 しばれる十勝の春まつ回帰の心情でしょう・・・。


 恩師の故郷が北海道で、よく故郷のワインをいただいたけれども、恩師の生前、この種の話を聞くことはなかった・・・しかし、なんとも恩師の子供の頃(その時代とご本人の気質)を彷彿とさせる情景。

 この情景の写真を載せたいと探したんですが、見つからなかった。・・・春3月はまだ雪に覆われているという、浦幌川を訪ねてみるしかないか・・・。

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